7月 05 2010
本当の意味での真実と裁判における真実
こないだの記事を書いていて思い出したことを書いてみようと思います。
それは,本当の意味での真実(実体的真実)と裁判おける真実(形式的真実)の違いについてです。
よくニュースとかで,「裁判で真実を明らかにしたい」みたいなコメントがあったりします。もちろん,当たり前の話しとして出来る限り真実を明らかにするように手続を進めていきます。特に,究極的には人の命まで奪ってしまう刑事裁判については,本当の意味での真実を明らかにするようしなければならないことは刑事訴訟法第1条にも規定されています。
ところが,民事訴訟に関して言えば,必ずしも真実が明らかになるわけではありません。
というのは,こないだの記事にあるように「立証責任」によって結論が大きく左右されるからです。
まるで民事訴訟の勉強のようですが,説明の便宜上,3つの前提が必要になりますのでこれを記載します。
①当事者に争いが無いことは立証しなくても良いし,裁判所はそれを前提に判決しなければならない
②当事者に争いがある場合,原則として「こういう事実があるんだ!」という方が立証しなければならない
③証拠によってもあるかないかよくわからないときは,主張している事実は無いものとする。
さて,例えばAさんがBさんに対して100万円を返せという訴訟を起こしたとします。
その際に,本来であれば,AさんはBさんに対してお金を貸したことを立証しなければなりません。具体的には借用書などになるかと思います。
これに対して,Bさんが「確かに100万円は借りたけども,こないだ返したじゃん」と反論したとします。
とすると,「AさんがBさんに100万円を貸した」という事実についてはAさんとBさんの間には争いはありませんので,上記①により,Aさんは「AさんがBさんに100万円を貸した」ということを借用書などによって立証する必要はありません。
次に,AさんはBさんの「返したじゃん」については,「何言ってんの?返してもらってないじゃん」と言ったとします。
この場合,「BさんがAさんに100万円返した」という事実については争いがあります。とすると,上記の②のとおり,「返済した」という事実を主張するBさんが立証する必要がありますので,返済したときの領収書とか振込の明細とかで立証することになります。ただ,現金でAさんに返しており,しかも誰も証人がいない場合はBさんは立証が極めて難しいので,結果としては上記の③のとおり返済の事実は認められないことになろうかと思います。とすると,裁判おける真実としては,「BさんはAさんからお金を借りた」という事実のみですので,本当にBさんは返していたとしても再度返済しなければなりません。本当はちゃんと返済していたにも関わらずです。
つまり,当事者に争いのない事実及び証拠によって認定できる事実が裁判における真実であって,本当の意味での真実とは食い違うことが多分に起こります。
極論すれば,AとBの間に一切お金の貸し借りがなかったとしても,Aが「貸した」,Bが「間違いないです」といえば,証拠なんか一切無くてもAとBの間にお金の貸し借りがあったことが真実になります。だから「形式的」真実なんですね。
先日,過払金の利息についての記事を書きました。そこでは,相手の業者が悪意の受益者では無いことの特段の事情を立証しない限り悪意の受益者と推定される旨の記載があります。
その前の記事にもあるとおり,私は,平成18年1月13日以前については,個人的には悪意の受益者ということは無いだろうと思っています。しかし,裁判手続上,相手が立証しない限り悪意の受益者と推定されますので,当然に平成18年1月13日以前も利息も含めて請求します。
本当の意味での真実はわかりませんが,形式的真実として悪意あれば遠慮無く請求しても良いですからね。
ということで,形式的真実を認めてもらうために今から岐阜の裁判所まで行ってきます。
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