はなみずき司法書士事務所
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9月 19 2009

「期限の利益の喪失の主張」と「信義則」(その2)

前回の続きです。

まずは,期限の利益の喪失を主張することが,信義則違反となると認めた判例です。

最高裁サイト
判決全文(PDF)

信義則違反を認めたということは,期限の利益を喪失していないということになりますので,債務者側にとって有利な判決です。簡単に言うと,債権者に対して,「あなたが紛らわしいことしてたんだから,今さら期限の利益を喪失したなんて言えないよ。」ということですね。

この判決の事実関係をすごく簡単にまとめると,

返済に遅れるときに,業者の担当者に連絡したところ,「遅れる分の利息も振り込んでくれれば大丈夫だよ。」という趣旨のことを言われていた。
その後も遅れて返済することがあったが,特段,業者は一括で返済を求めたりはしなかった
上記の対応から,借主は,少しくらい遅れても,余分に利息を支払っていれば問題ないと認識した。
ただ,業者から発行された領収書には,「利息」ではなく「遅延損害金」として処理されていた。
その後,6年程度取引を継続していた。

そして,判決では,上記のような事情では,借主が誤信するのも無理はないし,業者も借主が誤信しているのを知っていたのにも関わらず,その誤信を解くことなく取引をしていたんだから,今さら実は期限の利益を喪失していたなんて主張するのは虫がよすぎるでしょ,というような理由で借主が勝訴しています。


一方,期限の利益の喪失を主張することが,信義則違反とはならないとした判例です。
最高裁サイト
判決全文(PDF)

信義則違反を認めなかったということは,期限の利益を喪失していたということになりますので,債務者側にとって不利な判決です。したがって,通常の利息ではなく遅延損害金で請求されますので,過払金は発生しなくなります。

この判決の事実関係をすごく簡単にまとめると,

3回契約をしているが,そのほとんどで約束の期限を守って返済したことがない
すべての領収書において,利息ではなく遅延損害金に充当した旨の記載がある。
ただ,遅れても一括返済を求められることはなかった
最初の取引から遅れて返済しているのに,その後も契約を断ることなく,2回も再契約をしている。


そして,判決では,上記のような事情において,
一括弁済を求めるかどうかは,業者の勝手であり,一括返済を求めなかったからといって,期限の利益の喪失を主張しないとは認められない。
領収書には,「利息」ではなく,すべて「遅延損害金」と記載されており,これは期限の利益を喪失したことを主張しているからに他ならない。
いつも遅れて返済していたのに再度2回も契約しているが,これは①のとおり,業者の勝手であって業者が攻められるべきことではない。
そして,何より借主自身は,ほとんど期限を守って返済したことがないのであるから,遅れて返済しても良いと誤信するということも考えにくい。

ということで,借主の信義則違反の主張は認められませんでした。


とすると,この2つの判例の違いを見いだすことになるんですが,信義則違反を認めた判例は,遅れて返済することに対して業者に連絡をしており,しかも業者側が,余分に利息を払えば大丈夫というようなことを言って遅れたことを許したような事情があります。しかも,その後の返済についても借主が誤信しているのに,6年間という長期に渡ってあえて教えなかったという事情があります。
それに対し,信義則違反を認めなかった判例は,そもそもまともに返済したことが無く,業者も遅れたことに対して一度も許したような事情がありません

ということは,

遅れても大丈夫というようなことを業者が言ったか言わなかったか,というのが大きなポイントになるのでしょうか。もう少し広げて言うと,「遅れて返済しても大丈夫だという態度を業者が取ったか否か」がポイントなのでしょうか。

となると,今後は,取引履歴を見ただけでは,そのような事情があったかどうかなどはまったくわかりませんので,依頼者の方に細かく取引の状況を伺う必要が出てくるということになります。

しかし,「言った」,「言わない」という水掛け論になってしまう恐れもありますので,やはり,遅れることなく返済されているのが一番いいですね・・・。

※上記の解説は,私の単なる個人的な意見ですので,上記の情報は皆さん個人の責任においてご利用ください。

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