6月 27 2012
自己破産をしてもチャラにならない!
自己破産をしても支払いが免除にならない(免責されない)債権というものがあります(非免責債権)。
例えば,税金の滞納分や罰金といった国に対する支払いについては免責されませんし,子どもを養育する扶養義務や殺人をした場合の損害賠償義務なども免責されません。
これ以外に,よく問題になるのが,「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」です。(破産法253条1項6号)
破産の申し立てをする場合,必ず債権者一覧表という書類を提出します。これは,どこの誰にいくらくらい借入があるのかが記載された書面であり,これを裁判所に提出すると裁判所から債権者に対して破産手続に参加できる旨の書面が送られます。これによって,債権者は破産手続に参加でき,破産手続に異議を出したりといった自分の主張をすることができます。
しかしながら,破産者がとある債権者について,わざと債権者一覧表に記載しなかった場合,当然裁判所からの通知が債権者には行きませんので,まったく知らないところで破産手続が進行してしまっており,破産手続について異議などを申し立てることも出来ません。このようにわざと債権者一覧表に記載しなかったような場合には,債権者が著しく害されるため,例え破産をして免責許可決定を得ていたとしても,当該債権者については免責されないということになっています。
逆に言えば,債権者は破産手続がされていることを知っていれば破産手続に参加することができますので,条文上も「当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。」として,知っていた場合は非免責債権とはならず,免責されるとなっています。
では,わざとではなく,うっかり記載するのを忘れてしまっていたような過失による場合はどうなるのでしょうか?
この点,平成24年4月12日に大分地裁で判決がありました。
→最高裁サイト
→判決全文(PDF)
ざっくりした内容は次の通りです。
Aさんは,息子Bさんの育英会の奨学金の保証人になっていた。
↓
Bさんは卒業後就職し,Aさんとは疎遠になっていたところ,数年してからBさんが育英会への返済が滞っているとのことで,たびたびAさんに督促が来るようになっていたが,Aさんは支払ってはいなかった。
↓
Aさんは,消費者金融から借入をしていたが,返済が難しくなったので破産することとなった。
↓
しかしながら,育英からの通知が3年程度来ていなかったので,破産の申し立てをする際に債権者一覧表に育英会を記載するのを忘れてしまった。
↓
破産の申し立てを行い,免責許可決定も得た
↓
数年後,育英会から裁判を起こされたため,Aさんは免責を得ている旨主張したところ,育英会は債権者一覧表に記載されていないから,育英会の分は非免責債権であり,免責されていない旨の主張をした。
というものです。
そして,この裁判の判決は,Aさん敗訴。つまり,育英会の分は免責されておらずAさんは支払い義務があるというものです。
その理由はざっくり言うと以下の通りです。
1・破産者が無過失で記載しなかったのであれば免責しても良いが,過失がある場合は非免責債権となる。
2・債権者数は5社程度しかないから債権者数が膨大すぎて把握できないということもないし,何度も育英会は督促していたんだから,育英会の存在を知らないわけはない。したがって,少なくとも過失はある。
3・よって,育英会の分は非免責債権とならず,Aさんは支払わなければならない。
というものです。
せっかく破産をして免責が認められたのに,Aさんは再び約110万円の借入を負うこととなってしまいました。
・・・恐ろしい・・・・。
なお,上記裁判例は,弁護士や司法書士が介入せず,NPO法人の援助のもと手続をしていると思われますが,当事務所に限らず多くの弁護士,司法書士は,このようなことが無いように,自己破産もしくは個人再生をされる方については,必ず信用情報を取得していただいていると思います。
→全銀協
→CIC
→JICC
しかし,上記信用情報には載ってこない個人間の借入や保証債務については,ご本人さんからの申告が無い限りほとんど把握することはできません。
「ついうっかり」が後々大変なことになってしまう可能性がありますので,債権者の把握についてはしっかり思い出してご相談されるようにしてくださいね。
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