5月 31 2011
仮執行宣言
前回の記事のとおり,最近は判決に従わない業者が多いため,強制執行をして回収することが多くなっています。
この強制執行をするために絶対に必要な書類として,債務名義というものがあります。というのは,強制執行という手続は,他人の住居などを勝手に売却できてしまうような強力な手続ですので,強制執行できる根拠を示す書類が必要になるということです。
例えば,AさんがBさんに100万円貸したものの,期限が到来したのに返済してくれなかったとします。Aさんはしっかりしており,Bさんに貸す際にちゃんと借用書を取っていました。
では,Aさんはこの借用書を根拠にBさんの所有する不動産を売却することができるでしょうか。
答えは,借用書だけでは勝手に売却できません。
というのは,例え借用書があったとしても,それだけでは本当に100万円返してもらっていないのかわからないからです。実はAさんはBさんから振込で100万円を返してもらったものの,借用書は後日会ったときに返すという約束になってるかもしれませんからね。
ということで,Aさんができる手段としては,この借用書を証拠としてBさんを訴えることになります。そして,裁判の審理の中で,「AさんはBさんに100万円を貸したけど未だBさんは返済していないな」ということが認定されれば,Aさん勝訴の判決が出ます。この判決が上記の「債務名義」になります。
つまり,判決は,借用書という私人間で作成された書類ではなく,裁判所のお墨付きがある書類なので,判決があれば他人の不動産を勝手に売却することもできてしまう訳です。
さて,今日の本題です。
上の例はあっさり終わっていますが,日本の裁判は三審制であるため,一審で負けたとしても控訴,控訴審で負けたとしても上告することができます。ですので,一審判決が出ただけでは本当にAさんは100万円の権利があるかどうかは確定していません。
しかし,中にはどう考えても負けるとわかっているのに時間稼ぎのために控訴をしてくることもあります。場合によっては,裁判でもたもたしている間にBさんの財産がなくなってしまって,控訴審が終わる頃にはBさんはすでに無一文ということもあり得るわけです。
そこでとりうる手段が,「仮執行宣言が付いていれば判決が確定していない状況で強制執行をしてしまう」ということです。
これは,一審判決が
1 被告(Bさん)は,原告(Aさん)に対して金100万円を支払え。
2 訴訟費用は被告(Bさん)の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
というように,3番の「仮に執行することができる」という記載がある場合にできる手段です。
実際の記載はこんな感じ(PDFファイルが開きます)です。
つまり,「一審判決が確定していない状態でも仮に強制執行をしてもいいよ」というお墨付きを裁判所がくれたということですので,判決が出ればすぐに強制執行の手続に入ることができます。
ちなみに,「仮」となっていますが,仮も何も通常の強制執行のように差押え,がっつり回収します。ただし,控訴審判決で逆転敗訴した場合などには,あくまで「仮」なんだから,回収した分は返さなければなりません。
ということで,現在当事務所で強制執行をしているものはすべて仮執行宣言付き判決正本に基づいて強制執行をしていますが,多くの事件で控訴されていますので訴訟自体は今でも継続しています。
もっとも,控訴審で負けることはほとんど考えられないので,やはり,通常の強制執行同様,口座にお金が入っているかどうかが勝負ですね。
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