はなみずき司法書士事務所
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2014年2月

2月 21 2014

過払金発生後に再び借り入れが残る場合の利率

先日,アイフル(旧ライフ分)との訴訟で,過払金発生後の利率についての判決をいただきましたのでご紹介いたします。 
 

内容としては,継続的に取引をしており,いったん過払いとなったものの,その後借り入れを継続したことによって債務が残った場合,その債務に対する利率はいくらか,という問題です。 
 

前提として,利息制限法の下記の区分が必要となります。 
 

①10万円未満の借入れ→最大20%
②10万円以上100万円未満の借入れ→最大18%
③100万円以上の借入れ→最大15% 
 

具体的な数字を例に挙げると,平成26年1月31日時点で,約定利率で計算すると30万円の借り入れが残るが,法定利率で計算すると3万円しか残っていなかったとします。同日,5万円返済したとすると,実際には2万円の過払いとなっています。そして,2月28日に10万円を借り入れた場合,(過払い利息を考えなければ)8万円の債務が残ることになりますが,この8万円に対しては何パーセントの利息がかかるのかという問題です。 
 

この点,アイフル側は,こちらの最高裁判決(平成25年7月18日判決)を引用し,実質的に借り入れたのは8万円だから20%(上記①の区分)で計算すべきだと主張しています。 
 

これに対して,先日いただいた判決は20%ではなく18%であると判示しました。 
 

[#IMAGE|e0093884_23123488.jpg|201402/21/84/|mid|1486|2058#]
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上記判決をざっくり解説すると,上記とは別の最高裁判決(平成22年4月20日判決)を引用し,いったん利息制限法所定金利が低いゾーン(②の区分)に入った以降はその後に返済をして高い利率のゾーン(①の区分)に入っても利率は変わらないから,本件取引においても18%となったものが20%になることはない,というものです。
 

つまり,本件においては,いったん10万円以上の借り入れとなっているため,18%が上限金利となりますが,この上限金利は,返済によって10万円未満となったとしても20%になるのではなく18%のままなので,過払金発生後に借り入れをして,その時点での残債は8万円だけど18%のままだよ,ということです。 

もし,上記の例で2万円の過払金が発生している段階で100万円を借り入れた場合は平成25年7月18日最高裁判決の通り,実質の借入額(元本)は100万円ではなく98万円なので15%ではなく18%になりますが,まったく事案が異なります。
 
 

ということで,これをまとめると,
 

過払金発生後に借り入れをした場合,借入額が下の区分(例えば100万円)の借り入れをしたとしても,過払金充当後の残債が上の区分(例えば98万円)の残債しかない場合には上の区分の利率(例えば18%)である。
 

過払金発生後に借り入れをした場合,借入額が上の区分(例えば8万円)になったとしても,上の区分の利率(例えば20%)に変更されるわけではなく,もともとの下の区分の利率(18%)のままである。
 

ということになります。

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2月 10 2014

名義貸しと第三者弁済における過払金の行方

親族や友人から「絶対に迷惑は掛けないから・・・」と頼まれて,消費者金融やクレジットカードで名義貸しをされたことはありませんか? 
 

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名義貸しとは

名義貸しとは簡単に言えば,他人のためにローンを組んであげたり,信販会社や消費者金融のカードを作成して貸してあげることです。
 

本来は名義を借りる人(名義借人)が自分の名前でローンを組んだり,カードを作ったりすれば良いのですが,何らかの事情(ブラックで審査が通らない,収入が無いなど)によってローンなどが組めない等の理由で名義貸しをする人(名義貸人)の名前で組んで返済は名義借人が行います。 

どの業者においても名義貸しを認めるなんてことはありませんし,契約書にもカードの貸借を認めていませんので間違いなく契約違反となります。もし,業者に名義貸しが発覚した場合には契約が打ち切られ,現時点で残っている借り入れについて一括で返済を求められるなど不利益しかありません。なので,大前提として名義貸しはしてはいけません。 
 

名義貸しにおける債務者

では,名義貸しをしてしまった場合,誰の借金となり,誰が返済する義務を負うのでしょうか。 

この点については解説しなくてもお分かりになるかと思いますが,業者との関係においては,名義貸人の借金となりますので,業者から返済を求められた場合には名義貸人は返済する義務を負います。「借りたのは自分じゃない!」と言っても通用しません。これは,自ら分かったうえで名義貸しをしているわけですし,業者としてもあくまで名義貸しをした人にお金を貸したと認識をしていますので,逃れることはできません。 

ただし,これは業者との関係ですので,名義借人との関係では異なります。
つまり,名義貸人と名義借人との間では,「名義貸人の名義で契約はするけど,返済は名義借人の責任において行う」という合意がされているはずです。したがって,名義貸人は業者に返済したお金について名義借人に請求することができます。 
 

返済の効果

では,名義借人が業者に返済した場合,その返済したということは誰に効力が及ぶのでしょうか。
と,書くと難しくなってしまうのですが,名義借人が返済した場合,そのお金は誰が返済したことになるかということです。
これも素直に考えればよく,例え現実的には名義借人が返済したとしても,その返済の効力は名義貸人に及びます。 

したがって,50万円の名義貸しを行い,名義借人が10万円返済したのであれば,名義貸人は残りの40万円を返済すれば良いことになります。 
 

過払金の行方

では,名義借人が返済を続け,借金が完済となり,逆に過払いとなった場合はこの過払金は誰のものでしょうか。 

現実的に払い過ぎているのは名義借人ですので,名義借人が業者に対して請求できるようにも思えますし,上記の通り,返済の効果はあくまで名義貸人に及ぶため名義貸人が過払金を請求できそうにも思えます。
 

この点について最高裁判決はありませんが,私が知る限りでは,過払金は名義貸人のものになると考えられています。その理由は,上記の後者の理由にある「返済の効果は名義貸人に効力が及ぶ」という部分です。
最高裁判決ではなく,東京高裁判決となりますが,「本件取引における借入れ及び弁済の法律上の効果は名義貸人に帰属するというべきであり(中略)業者に対する不当利得返還請求権も名義借人ではなく名義貸人に帰属する」としています。(東京高裁平成23年8月24日判決)
 

もっとも,名義貸人はあくまで名義貸しをしただけであって,実質的には過払金をもらう権限はありません。ですので,回収した過払金は名義借人との間でちゃんと清算をしなければなりません。 
 

第三者弁済の場合

第三者弁済とは,他人の債務を代わりに返済してあげた場合です。 

名義貸しは,名義貸人の名前で返済していますが,第三者弁済は自分の名前で返済をしている点が違いますし,名義貸しと異なり,契約で禁止されているということもありません。
 

この場合,過払金は誰のものかというと,第三者が返済した部分については第三者自身のものになります。したがって,この場合は名義貸しの場合と異なり,返済した人が直接請求することになります。
 

実は,第三者弁済なのかそうでないのかは結構微妙なことがありなかなか区別がつかないことも多くあります。
良くあるのが親族が本人に代わって返済する場合です。
 

例えば,息子の借金を父親が業者に返しに行った場合,父親の名前で返済すれば第三者弁済となり,もし過払金があれば父親が過払い請求を行います。しかし,息子が業者に返済しにいく時間が無いので代理として父親が返済しに行った場合,あくまで父親は代理で来たに過ぎませんので返済したのは息子ということになり,過払金も息子が請求することになります。 

ただ,一般的に親子の間で,第三者弁済なのか代理人や使者として返済しているのか明確に区別をしていることはありませんので,どちらが正解なのかわからない場合も多いです。その場合は,どちらかに過払金を帰属させる旨の合意をするなどして一本化することが多いですね。
 
 
 

以上の通り,名義貸しにしても第三者弁済にしても,過払い請求をすること自体は間違いなく可能です。ただ,いったい誰が請求すれば良いのか,という点でもめる場合もあります。実際,当事務所でも名義貸しや第三者弁済が問題になっている事件が数件係属中です。
本当に個別具体的な事情によって結論が変わってきますので,このような状況にある場合はまずはお近くの弁護士や司法書士にご相談ください。

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